あなたの給料は妥当か?①
世の中には常に過大評価されているものがある。
そう、あなたの同僚とか。
いつも行列ができていると評判の店に行ってみて、「?」と感じることがある。
いったい何が行列を作らせているのか。
そう言えば、オーストラリアの不動産はずっと過大評価されていた。
今でもまだ高すぎると思うが、最近は豪ドル安が進んでいるから、外国人から見れば過大評価が是正されつつある。
いや、因果関係が逆だ。
オーストラリアの過大評価が是正されるために豪ドル安が進んでいる。
投資においては、「世の中に存在する歪みを見つけろ」と言われる。
何らかの理由で過小評価されているものを見つけて人より先んじて投資し、やがてその歪みが是正されることによって利益を得るのだ。
けれども、言うは易く行うは難しだ。
誰もがウォーレン・バフェットのようには儲けられない。
ところが、である。
この世の中には歪みに歪みきった場所があり、そこから莫大な利益が得られるのだ。
そしてそれは比較的簡単に、誰にでも見つけることができる。
労働市場は歪みだらけ
私は労働市場こそ、歪みだらけだと思う。
オーストラリアで私が目撃した歪みの数々を挙げていこう。
不動産エージェントA
私の妻の職場に、超ちゃらんぽらんなオージーの若者がいた。
顧客からのメールにはほとんど返信しないらしい。
既読スルーでなく、開けさえしていないのかもしれない。
あまりにちゃらんぽらんだったから、やがてボスから圧力がかかるようになった。
それを察した彼は転職活動を開始した。
そして見事、次の職場(同業種)を見つけ、風の便りによれば年収2万ドル(160万円)ほど給料がアップしたそうである。
ここで重要なのは、転職の前後で彼の能力は何も変わっていないということだ。
つまりどちらかの職場では過大評価され、他方では過小評価(または適正評価)されている。
実際の彼の仕事ぶりを見たわけでないが、私の直感では、転職後が過大評価されている。
不動産エージェントB
私の妻の職場に、仕事は早いが超ずさんな韓国人がいた。
あるとき彼も転職し、これも2万ドルほど給料アップとのことである。
繰り返すが、転職の前後で彼の能力は変わっていない。
どちらかの職場では過大評価され、他方では…。
実は彼とは友達で、転職後の話を聞くことができた。
給料アップに加え、転職後の職場は「超お気楽」で「暇すぎる」と彼は言う。
「実質、一日何時間働いてるの?」
と訊いた私に彼は答えた。
「6時間くらいかな」
「はい?」横で聴いていたもう一人の韓国人は目を見開いた。
彼はシドニーのワールドスクウェア付近でヘアサロンを経営していた。
経営と言っても自らも朝から晩まで長時間労働を強いられていたのである。
ほとんどの時間をサロンで働いていて、すぐ近くにあるアパートメントには寝に帰るだけだから、一部屋を人に貸していた。
家賃に電気代込みで貸していたのだが、あるとき、一か月の電気代が二千ドル近くした。
電気代込みをいいことに、そのフラットメイトが暖房器具のスイッチを常にONにしていたということが後に発覚した、踏んだり蹴ったりだ、ということである。
…話が逸れた。
この不動産エージェントBについては、転職前は過小評価されていたかもしれないが、転職後は労働時間のことを考慮すると過大評価されているのではないだろうか。
私(シドニーの職場)
あるとき社長(おじいちゃん)と一緒に作業することがあった。
そのときどうも彼は、私の仕事のやり方が意外とまともだと知ったらしい。
その後しばらくして、昇給があった。
一挙に1万ドル(80万円近く)増えていたのである。
あのとき一緒に作業しなければそんなに急に増えないはずだ。
…というように、あなたの同僚が過大評価されているように感じるのは、決して気のせいではない。
評価する側は、公正な評価になど興味ないのである。
フィーリングで決めているのである。
ここで我々ができる建設的な行動、それは同僚を糾弾することでなく、労働市場の歪みを最大限に利用すること、つまり過大評価される側を目指すことだろう。