Austらぼ

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SMSFという偏愛

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私は日々、ファンドマネジャーとして並み居る猛者たちを相手に生き馬の目を抜くような闘いを繰り広げている。

AustralianSuper, Cbus, Hostplus…彼らは幾度となく拳を交えた強敵(とも)だ。

戦績はこうなっている。

一年目 五分五分

二年目 押され気味

三年目 負けていたが…

 

三年目はあと三か月残っているが勝利宣言していいだろう。

私のSelf-managed Super Fund (SMSF) は今年度、Industry super fundたちとの死闘を制した。

関連記事「毎年5万ドル以上Super(私的年金)にぶち込んだ男の末路」

 

仲間たち(SMSF保有者たち)はどうだろうか?

非常に心配である。なぜなら、多くのSMSF保有者たちはIndustry Super Fundとの闘いに、ことごとく敗れ去っているからである。

 

SMSFで投資できるもの

個別株はもちろん、不動産、土地、為替、先物など、一般に投資(投機)とされているものなら大抵OKだ。アートやビンテージワインでさえ投資とみなされる。

注)SMSFで保有する不動産を自宅にすることはできない。

 

SMSFという偏愛①

SMSFなんてものをわざわざ開設する人は、独自のアイデア(思い込み)を持っていて、その対象に偏重した投資をするらしい。

その偏重ぶりがあまりに酷いので、ATOから「もっと分散しなさい」とのお達しがあったらしい。ATOはSMSF保有者たちの「低すぎる金融リテラシー」を危惧している。

 

これは何となく想像がつく。きっとアレに一点投資しているに違いない。オーストラリアはアレの偏愛者だらけだ。

関連記事「不動産5軒持っている人は金持ちか?」

 

「不動産投資するならSMSFを開設した方がいい」とか「この物件はSMSFに最適」――そんな文言を何度も見たことがある。

そういうのを見るたび、Superの中の税率が有利なんだったら不動産に限らず何の投資でもいいじゃないか? といつも思ってしまう。

ちなみにSMSFから不動産投資する場合、ローンの利子は高くなる。

だから私自身はSMSF内で不動産投資をやろうとは思わない。

 

注)分散するのが必ずしも正しい訳ではない。が、SMSFの投資先はある程度分散しなければいけないというルールがあるようだ。

 

SMSFという偏愛②

SMSFで高配当株に投資するという手法がある。

「株の配当金が税引き後に増える怪奇現象」で解説したように、二重課税をしないのがオーストラリア国のポリシーだ。

配当利回り6.5%の株があったとしよう。

その場合、Super内では以下の計算によって利回り7.3%になる。

6.5 – 6.5 x (15 – 27.5)/100 = 7.31

(Fully frankedの場合。詳しくは過去記事を参照して欲しい。ちなみに法人税は今後徐々に下がって行く。)

 

彼らの偏愛の対象として、かつてTelstra株というのがあった。

「Telstraは高配当で安定している。あわよくば株価の上昇も狙える。でも投資は自己責任で」などとファイナンシャルアドバイザーが高齢者に吹き込むのかもしれない。

ところがある時、Telstraが「このままでは競争に勝てないので、今後、配当は減らします」と宣言した。

元々下落傾向だったTelstra株は、それによってさらに急落してしまった。

 

SMSFという偏愛③

ビジネスオーナーの場合、自分のビジネスにオフィス(店舗)を貸すという方法がある。

SMSFで商業用の不動産を購入し、それを自分自身に貸すのだ。

これはかなり込み入ったスキームだ。

SMSFとしては確実に賃料を受け取ることができ、本人はせっせとSuperannuationを積み立てることができる。

これについて私は意見する立場にない。正直よく知らないからだ。滅多に使えないスキームだがビジネスオーナーは検討してみてはいかがだろうか?

 

SMSFという偏愛④

私のポートフォリオはP2Pレンディングに偏重している。

なぜそうなってしまったか?

私はオーストラリアにおいて、かなり早い段階でP2Pレンディングの優位性を見出した。

P2Pレンディングの二つのプラットフォームを使っているが、「P2Pレンディングでボロ儲け」で紹介したRateSetterのリターンは当初11%近くあった。

「こんなに利回りが高いのなら、なんで敢えて株や不動産に投資する必要があるんだろう?」

私はかなり大胆にRateSetterに資金を投入した。

(しかし今やRateSetterの利回りは下がりさほどオイシイ投資ではなくなった。一方で株式市場は暴落したのだから、今後、私の偏愛は株へとシフトするだろう。)

 

次に生じた考えはこうだ。

「今以上稼いでも、かなりの割合を税金で持って行かれる。これではリターンvsリスクが割に合わない。私は投資を余剰資金でやっている。ならいっそ税率の低いSuper内で投資した方がいいのでは?」

ということで、esuperfundというプラットフォームでSMSFを開設した。

 

SMSFの利点

  • 何にでも投資できる。よって今回のような金融市場の暴落を回避できる。
  • Superの外でやっている投資をSMSF内に移行できる。
  • 最大4人が参加できる。(例えば家族で。)より多くの資金を「偏愛」の対象に注入できる。
  • 手数料が低い。一般には高いことになっているが、それはSMSF管理会社にお任せした場合だ。esuperfundはDIYだ。ある程度の資金を超えると手数料は一般のSuper Fundより低くなる。

 

SMSFの欠点

  • 手数料が高い。たぶん多くのSMSF保有者は、その管理をSMSF管理会社に任せている。この場合、手数料は高い。
  • 私はDIYでやっている。この場合、手数料は低いが管理が超面倒くさい。年一回、SMSFのauditに備えなければならない。一応、esuperfundの指示通り書類を揃えればいいのだが、初心者にはかなり難しい。よほどpassionがないとやってられない。

 

SMSF vs 一般のSuper Fund

以下、APRA fundsが一般のSuper Fund。出所:ATO/SMSF investment profile

 

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これを見るとSMSFは大抵負けていることが分かる。骨折り損のくたびれ儲けである。

「ほぼ確実に2億円貯める方法」を書いた時、私自身はSMSFを運営していたが、上図のような結果を知っていた。だからさり気なくAustralianSuperを推したのだ。

 

果てしない闘い

敷居が高いSMSFだが、上述のように、その保有者は必ずしも投資が得意という訳ではない。

彼らは高いリターンを追及するというよりも、自己の偏愛を満たすために手間(もしくは手数料)をかけてSMSFを運営するのだ。Industry Super Fundとの勝負は二の次なのである。

 

一方、少数派ではあるが私のようにIndustry Super Fundに真っ向勝負を挑む者もいる。

強敵(とも)との闘いはこれから10年も20年も続くのである。