パートの最低賃金は25%増し(同一労働同一賃金の話)
日本で働いていたとき。とある部署にて…
私 「Aさん、この仕事を頼んでもいいですか?」
正社員A 「はあ? 何でわたしが? ぶつくさ…」
別の日。今度はBさんのところへ
私 「Bさん、この仕事を頼んでもいいですか?」
非正規社員B「はい、喜んでー!」
オーストラリアは同一労働同一賃金
オーストラリアの雇用形態の代表的なものは以下の三つだ。
- フルタイム
- パートタイム
- カジュアル
フルタイム
イメージとしては、日本の正社員。
週の労働時間は約38時間。
オーストラリアではAnnual Leaveという有給休暇20日とは別に、Sick Leaveという有給の病欠(病院に行くときに使える)がある。
だから仮病による休みが絶えない、と言われている。
これに関しては、日本の有給休暇(病気だろうが何だろうが有休は有休)の方が公正な気もするが、それは常時健康な人の考えなのかもしれない。
もし何らかの病気にかかったら、「Sick Leaveのおかげで気兼ねなく病院に通え、休める。ありがたい」と思うようになるかもしれない。
パートタイム
これは、日本の「パート」とはかなり違っている。
フルタイムとパートタイムの違いは、週に38時間働くか、それより短いかだけの違いである。
パートタイムは、フルタイムと同じようにAnnual LeaveやSick Leave、福利厚生を享受できる。
週に働く時間がフルタイムの半分なら、有休も半分、というように。
また、パートタイムがフルタイムより格下というイメージはない。
単にそれは、ライフスタイルの問題だ。
(もちろん、パートタイムのままマネジャーにはなれないだろうが。)
カジュアル
これは、日本の「パート」や「アルバイト」に近い。
が、驚いたことに時給換算では、カジュアルはフルタイムやパートタイムより高くなる。
というのも、上記Annual LeaveやSick Leaveは与えられず、また不安定な雇用形態だからだ。
それを埋め合わせるためにカジュアルの場合、最低賃金は25%加算される。
紛らわしいが、日本で言うところの「パート」はオーストラリアでは「カジュアル」で、最低賃金は25%増しになるのである。
正社員Aさんと非正規社員Bさんの仕事内容は同じ。経路が違うだけ
さて、冒頭に戻る。
正社員Aさんと非正規社員Bさんの職種は同じで、仕事内容も同じだったが、給料や福利厚生は正社員Aさんの方が上だ。
単に、会社に入って来たときの経路が違うだけなのに。
これは変だ。不自然すぎる。
が、さらにおかしなことに、日本では誰もがこれを「当然のこと」、「仕方ないこと」と思っている。
加えて言えば、正社員Aさんは緩みきっていたが、非正規社員Bさんの方は危機感があるのか、どんな仕事にも熱心に取り組んでいた。
私から見れば、非正規社員Bさんこそ、より手厚い待遇を受けるべきだった。
同一労働同一賃金が先進国のスタンダード
何年か前に、私が日本で働いていた企業の取締役と会う機会があった。
「今度、人事部も管轄することになった」と彼は言った。
そこで私は言った。
「じゃあ、同一労働同一賃金を実現して下さいよ」
彼はキョトンとし、何のことか分からないといった顔をした。
私は正社員Aさんと非正規社員Bさんの例を使って説明した。
これが我々にとって最も分かり易い例なのだ。
「同一労働同一賃金が先進国のスタンダードです」
話しているうちに興奮してきたのか、私の口からは、そんな欧米崇拝者まがいの言葉まで飛び出した。
(欧米がやっていることは全て正しいから日本も見習うべき、のようなロジックを、恥ずかしながらこのとき私は使ってしまったわけだ。)
それはさておき、ともかく取締役は納得し、「それは何とかしたいなあ」と同意した。
その後、数年が経過したが、その企業の人事制度がどうなったか私は知らない。
取締役が奮闘して、不自然・不公正な雇用形態が改善されたことを期待している。
(2020年に同一労働同一賃金に関する法律が施行されるようだから、それを待って、取締役は何もしなかったかもしれないが。)