Job Hopping はやるべきか?
私はオーストラリアに移住する前、一年近い充電期間を持った。
長期の海外旅行に3回出かけ、その間の期間には図書館やジムに通ったのである。
旅行は憧れのヨーロッパだ。(プラス韓国)
最初にマルタに降り立ったときの太陽が何と眩しかったことか。眼前に広がる地中海の何と碧かったことか。
だが意外なことに、海外旅行よりも図書館とジム通いをしていた時期の方が、充実感があった。
これは朗報だ。
充実した生活を送るのに必ずしも大金は必要ないということになる。
海外旅行もやり過ぎると、感動が薄れるのだ。
Job Hopping
その頃、Evernoteというアプリが便利だと聞き、実際使っていたのだがイマイチ有用性が分からずにいた。
そんな折、渋谷でEvernote主催の講演会が催されるとの通知が来たので行ってみることにした。
そこでのメインイベントとして、ビジネス界のキーパーソン(と言っても知らない人ばかり)によるトークショーがあった。
しかしながら事前の段取りが悪かったのか、トークは全くまとまりのないものだった。
興味深くもなければ、示唆にも富まず。
会場に千人はいたと思うが、千人が盛り上がらないトークを延々聴かされる羽目になった。
また、Evernote関連の言及は一言もなく、そもそもの私の目的――Evernoteの有用な使い方を知る――は終ぞ果たされなかった。
それはさておき登壇者の中に、30歳くらいの女性がいた。
輝かしい経歴を持つ人物として彼女は紹介された。
幾社もの名だたるIT企業に一、二年ずつ在籍していたとのことである。(技術職ではなかった)
それを聞いた私の率直な感想は、「それらの企業で一体どんな実績を残したんだろう?」というものだった。
少なくとも私の職種では、一、二年では中途半端な仕事しかできないからだ。
私は長年働いた企業を辞めたばかりだった。
オーストラリア移住を先送りにし、永住ビザをドブに捨て、十何年もの年月を一つの会社の同じ部署で過ごした…。
今でもときどき思う。
もし最初に永住ビザを取った時、すぐに移住していたらどうなっていただろうと。
恐らく何も考えずに家を買って、偶然、不動産ブームに乗り、自分は投資の天才といい気になっていたのではないだろうか。(どこかで見たような…)
ところで当時は知らなかったが、オーストラリアに来て、短期間で職を転々とすることをJob Hoppingと呼ぶのだと知った。
今になって思うと彼女はまさにJob Hopperに当てはまる。
それで私はJob Hoppingを否定しようとしているのだろうか?
実のところその逆である。
企業の人事は歪みだらけ
オーストラリアでは転職は盛んに行われる。
新卒一括採用なんてものはなく、「即戦力」を重用する。
例えばマーケティング部署に、全くの別業界から人が来ることがある。
これは、「業界の知識」よりも「マーケティングの技術」を重視していることになる。(スティーブ・ジョブズがペプシからマーケティングの専門家を招いたように。)
それで本当に大丈夫なのか? と様子を見ていると、やっぱりダメダメだったりする。
しかしそれは私から見た評価で、どうやら会社側は「それで全然OK」と見ているようだ。
(選考過程ではあんなに人を選り好みするくせに!)
世の中には常に、何かの弾みで過大評価(または過小評価)されているものがある。
映画やレストラン、ブランド、そして何割かの会社員。
そういった例は今いるオーストラリアの会社でも見かける。
「こういうの日本で散々見た」という既視感でいっぱいである。
企業の人事は歪みだらけだ。
過去記事「あなたの給料は妥当か?①」において、労働市場こそ歪みだらけだと述べた。
そういった歪み(不公平)を見るのは気持ちが悪くて仕方ないが、それを個人が是正することはできない。
だったら個人はそれを利用して、過大評価(少なくとも適正評価)を受ける組織・職業を探し続けるべきだ。
『専業主婦は2億円損をする』という本にも同様のことが書かれていた。私は完全に同意する。
「転職を繰り返せば自分に向いた仕事に出合う確率が上がり、スペシャリストとしての経験値も高くなっていきます。これもアメリカの調査ですが、15年以上のキャリアがある管理職で、転職2回のひとが役員になる確率は2%ですが、転職が5回以上だと18%に上がるそうです。転職は“天職”へとつながっているのです。」