永住ビザをドブに捨てた過去② ビザ失効
技術査定の結果およびその他の必要書類をもってSkilled Independent Visaの申請を行い、数か月待つとVisa Grantとなった。
(ここは盛り上がるべきところなのだが敢えて流そう。)
Initial Entry
次にやることはInitial Entryである。
所定の期間内に一度オーストラリア入りしないと「移住するつもりなし」とみなされて永住ビザを失効する。
「永住ビザをドブに捨てた」というタイトルだから、Initial Entryをやらなかったというオチだと思われたかもしれない。が、普通にちゃんとやったのである。
このときはゴールドコーストとブリスベンを旅行した。
当たり前だが、「旅行ビザ」は取らずに来たから本当に入国できるのかドキドキものだったが、ちゃんと入れた。
私の永住ビザは有効だったのである。
これにて全ての要件を満たした。めでたしめでたし…とはならない。
残酷な価値観
次の問題は、具体的にいつ移住を決行するかということだ。
元々、永住ビザを取ったらすぐに行くということは考えていなかった。
頃合いを見つけ、準備万端で移住しようと思っていたのだ。
猶予はVisa Grantの日から5年もある。そう、5年も。(そろそろオチが見えてきた?)
さて、私は日本の企業で研究開発職に就いていた。
その業界において、製品開発のサイクルは2~3年だ。
初めの2年ほどは完全に私の仕事であり、終わりの1年ほどで製品は徐々に私の手から離れる。
だったら「製品が手を離れた時点」が最適の辞め時だと思われるかもしれない。
しかしそうはならない。
製品Aに手がかからなくなってきたら、新たに製品Bに着手しなければならない。
Bがいいところまで行ったら新たにC…という無限ループなのである。
また、新たなプロジェクトというのは降って湧いてくるわけではなく、私自身が探索することによって生み出していたのだ。
奇妙に聞こえるかもしれない。
私は辞め時を探りながらも、それと同時にせっせと新たなプロジェクトを創り出していた。
そしていったんやり始めたからには、「辞めてオーストラリアに行きます」などとは言い出せない。
それなら新しいプロジェクトなんて提案しなければいいじゃん? と思われるだろう。
しかし、いずれ辞めるからといって手を抜くつもりのなかった私にはそれができなかった。
なぜか?
その組織の暗黙の了解では、プロジェクトを生み出せないことは「無能」を意味していたからだ。
英語のハンディキャップを埋めるもの
一方、現在働いているオーストラリア企業ではどうだろう?
どうやらそういった残酷な価値観は存在しないようである。
「会社が指示して来る前に先手を打って稼ぐネタを提供できなければ無能」というヤバい?マインドを持った人間は今までいなかっただろうから、私は明らかに異質な存在である。
その日本企業が長年かけて私に施した洗脳はなかなか解けないようだ。
そこで働いていた頃、社員研修などがあると、「こういうのは一種の洗脳だ。自分はそんなのに影響されない」と言っていた同僚がいたが、私は内心、「お前はもう洗脳されている」と思っていた。(ケンシロウ風に)
それでさて、日本企業によって植え付けられたヤバいマインドは現在の私の仕事にどのように影響しているだろうか?
実のところ大いに役立っているのである。
それは英語のハンディキャップを補って余りある。
かくして私は永住ビザをドブに捨てた
ところでSkilled Independent Visaは無条件の永住ビザではない。
更新するために、「過去5年の間に2年以上、オーストラリアに居住」していなければならない。
私はこれを満たすことができなかった。ずっと日本にいたから。
このようにして、私はせっかく取った永住ビザをドブに捨てたのである。
しかしこの話はまだ続く。
現在私がオーストラリアにいる理由を説明していないから。