Amazon.com.au で3か月間 物販してみた結果
日本人のAmazon依存度は極めて高い。
一方、オーストラリアではそれほどでもない。
というのもAmazonがオーストラリアに来たのは2017年12月で、まだ2年しか経っていないからだ。
今のところサイト訪問者数はeBayの方が断然上らしいが、アメリカや日本で起こっていること――どんどん増していくAmazonの存在感――はオーストラリアでも起こるはずだ。
ということで物は試し、Amazon.com.auにおいて商品を販売してみた。
売り上げ推移
以下にAmazon.com.auにおける二週間毎の販売推移を示す。
縦軸はオーストラリアドル。
無在庫販売
私が販売を開始したのは2019年10月5日~19日の間で、当然ながらその期間は売り上げが少ない。
私はまず、無在庫販売という手法を取った。
近所の卸売業者の商品をAmazon.com.auにリスティングし、(というか、すでに誰かが売っている商品に乗っかってそれより安値を付けた)注文が入ったら卸売業者へ買いに走るというやり方だ。
Amazonでは商品ランキングが見られるが、「どのカテゴリーで何位くらいだったらどれくらいの頻度で売れるか?」なんて最初は見当がつかない。
だから初心者は当然、在庫リスクゼロの無在庫販売から始めるべきだ。
こんなバカみたいな方法でも、ポツリ、またポツリと注文は入った。
商品を発送するための箱でさえ、注文が入ってからその商品に合う大きさのものをBunningsに買いに走った。
だからこのときの一発送あたりにかかる手間はかなりのものだった。
FBA
商品を買い手に発送する方法として、Merchant(売り手)が直接発送する方法と、Fulfillment By Amazon (FBA)という方法がある。
FBAの場合は予め商品をAmazonの倉庫に送っておき、注文が入るとAmazonのスタッフが発送処理をする。
モノにもよるが、大抵の場合、FBAの方が経費は安くなる。
発送処理の手間も減るためFBAは良いことづくめだ。
無在庫販売をしばらく続けていると、継続的に売れていく商品が分かってくる。
そういったものは売れると確信できるから、FBAを利用した方が良い。
というわけで、販売を始めて1か月くらいで一部の商品をFBAに移行した。
I want you back!
ジャクソン・ファイヴの歌で、I Want You Back(帰って欲しいの)というのがある。
私は初めて切実にこの気持ちを知った。
Amazonでの販売は、私の妻名義で始めた。
だからこれは彼女のビジネスである。
妻の本業は11月中旬あたりから忙しくなくなるため、休暇として彼女一人で日本に帰ることになっていた。
「せっかくだから3週間くらい行ってくれば?」
妻が航空券を予約するとき、私はそう提案した。このときはまだAmazonでの販売を始めていなかったのだ。
しかし、なめていたが実際やり始めると、オンラインでの物販というのはかなりの労働であることが分かった。
妻が不在中、私は会社帰りに卸売業者に立ち寄り、注文の入った商品を仕入れ、時に箱を買い足し、夜に箱詰めをして翌朝、会社へ行く途中でNewsagency(新聞、雑誌等を売ってる店)に寄って商品を出荷し、週末はFBAの発送準備をする――という作業を一人でこなした。
商品を予めAmazonの倉庫に送るという作業も、慣れていなかったこともあり、かなりの時間を要した。
FBAで自動的にチャリンチャリンと売れていく――不労所得のようなものを妄想していたが、決してそのようなものではなかった。
I want you back!
私は泣きそうになりながら叫んだ。
クリスマス商戦
11月30日~12月14日で売り上げが急増しているのは言うまでもなくホリデーシーズンに向けての買い物によるものだ。
欧米では人々はクリスマス前にショッピングに勤しむ――ニュースで見聞きしていたことだが改めてそれを実感した。
物凄い勢いで注文が入ったのである――私の売り上げは大したことないかもしれないが、少なくともオンライン物販初心者の私にはそう感じられた。
妻が戻ったものの、この時期は発送処理にてんやわんやだった。
今思うと、始めたタイミングが良かった。クリスマス商戦を体験できたこと、またその前に練習を積むことができたからである。
販売キャンセル
クリスマス商戦中のドタバタで、せっかく入った注文をこちらからキャンセルするという惜しい経験もした。
利幅が100ドル近くある商品に対し、一晩に5個注文が入ったものの、卸売業者に行くと在庫がないと言うのである。
前日は在庫が大量にある風を装っていたじゃないか!
在庫があるうちに爆買いしておけばよかった。
私は泣く泣く注文をキャンセルした。
SellerはAmazonからパフォーマンスを評価されている。
販売キャンセルをやり過ぎるとアカウントを閉じられることもある。
このとき一時的に私のSellerとしての評価が急落した。
ヒヤヒヤしたが、時間が経つとそれは解消された。
やがてクリスマスが訪れ、嵐は過ぎ去った。
利益
で、肝心の利益は? ここまでそう思いながら読まれたに違いない。
言うまでもないが利益とは
売り上げ - 経費 = 利益
である。経費の内訳を書くと
売り上げ - Amazonプラットフォーム料 - 送料 - 箱代 = 利益
となる。Amazonプラットフォーム料はざっくり売り上げの10%程度である。
それで利益は…
正直なところ、本当に計算したことがない。(面倒臭いから)
利益は一年後のTax Returnで明らかになるだろう。
…だが概算値ならある。
おそらく売り上げの二割程度だ。
そうすると上記の期間で売り上げの合計は約36,000ドルだから、その20%なら7,200ドルになる。
一年あたりにするとどうなるか?
今回はクリスマス特需が含まれるからそれを除外して、二週間あたりの売り上げを控えめに3,500ドルだとしよう。すると
3,500 x 26 x 0.2 = 18,200ドル
為替レートを75円とすると
18,200 x 75 = 1,365,000円
となり、低く見積もっても月に10万円の利益ということになる。
ど素人の副業としては十分だろうか?
それともガッカリされただろうか?
税金
オンライン物販は結構な手間がかかる労働だと前述した。
上記の利益がそっくりそのまま懐に入るなら、我々の労働も報われるかもしれない。
ところで以下はオーストラリアの税率だ。
多くの人の所得は$37,001 ― $90,000 の間に入る。
仮に80,000ドルだったとしよう。
すると、それ以上稼いだ分に対し、税金が34.5%かかる。(Medicare Levy込み)
もし元々の所得が90,000ドルあったとしよう。
そうすると、それ以上稼いだ分への税金は39%かかる。(Medicare Levy込み)
さて、この手間のかかる副業は、やるに値するだろうか?
中国輸入、OEM、ODM、プライベートブランド…
年始にシドニーから友人が泊りに来た。
その友人には在庫部屋で寝てもらった。
また、友人とドライブ中にもNewsagencyに立ち寄って商品の出荷をした。
友人は訝った。別に隠す理由もない。
「Amazonで物販している」
そう言う私に、友人はやや意識高い系のセリフを吐いた。
「それって何か新しいスキルが身に付くの? (新しいことが学べないんならそんなことで小銭を稼ぐなんて時間の無駄じゃない?)」
「少なくとも、オンラインショッピングの裏側が分かるよ」
そう答えたが、実のところ私はもっと意識高い系だった。
私がまだ日本にいた頃、クリス・アンダーソンの”MAKERS”と”FREE”という本を読んでいたく感銘を受けた。(クリス・アンダーソンはロングテールという言葉の提唱者だ。)
そして、できることなら私も何か作ってネットで売ってみたいと夢想したものだ。
(私の本業は企業での研究開発だから、すでにMakerではあるのだが。)
だからその前段階として、まずは物販を試してみたのである。
中国輸入、OEM、ODM、プライベートブランド…等々、ネットには情報が溢れている。
私もそろそろ次の段階に進むべきだ――まだ気力が残っているならば。