株価が上がる原理
株価は長期的には上がると言われている。
あなたはこの理由を明快に答えられるだろうか?
一見、オーストラリアと何の関係もないようだが、実のところオーストラリアを知り、ひいては日本を知るために必要な問いなのである。
さてあなたは明快に答えられるだろうか?
―長期的に企業の利益が増えていくからだろ!
なぜ企業の利益が増えれば株価が上がるのか?
―株を持つということは、企業を分割して所有するということだ! 高い利益を出す企業の一部を所有すると得だろう!
なぜ高い利益を出す企業の一部を所有すると得なのか?
―高い利益を出す企業は価値が高いということだ! だからみんなその一部を所有したがるのだ!
価値の高い企業の一部を所有したからと言って、実際にその会社を解体して現金化して貰えるわけではない。それでもあなたは株を買いたいか?
―……
これからする説明は根本的すぎて、株に詳しい方たちからは一笑に付されそうだ。
しかし私自身、誰かが以下のようなやり方で「株価が上がる原理」を説明しているのを見たことがない。
だから敢えてやってみようと思う。
オーストラリア株は高配当
オーストラリアには、配当利回り5%以上の銘柄がゴロゴロしている。
配当とは、企業の税引き後の利益の山分けである。
私は、「株とは配当を受け取る権利」という観点で株価が上がる原理を説明したい。
株価が上がる原理
現在、市場においてA社の株は100万円の値をつけているとする。
A社は右肩上がりに利益を増やし、去年は一株あたり5万円の配当を出した。
そうすると配当利回りは5%になる。
今年も平常通りA社が業務を行い、期日が来ると5万円(もしくはそれ以上)貰えると期待できる。
あなたはこの株を買うだろうか?
―いやぁ、株は値動きが激しいから配当利回り5%くらいじゃ手を出したくない。
時は流れ、A社は去年よりも利益を増やし、今期は一株あたり6万円の配当を出すことが決まった。
株価はまだ100万円である。
したがって配当利回りは6%だ。
あなたはこの株を買うだろうか?
―知人は株で失敗した。だから株は怖い。やりたくない。
時は流れ、A社は前期よりも利益を増やし、今期は一株あたり7万円の配当を出すことが決まった。
市場でこの銘柄は見過ごされ、株価はまだ100万円である。
したがって配当利回りは7%である。
あなたはこの株を買うだろうか?
以下繰り返し…
時は流れ、A社は一株あたり10万円の配当を出すと言う。
市場でこの銘柄は見過ごされ、株価はまだ100万円である。
あなたはこの株を…買わざるを得ないのである。
(買った方が得だから)
実際には株価は待っていてくれない。
需要と供給の関係で、多くの人が欲しいと思うものは値段が上がる。
したがって長期にわたって企業が増益し続ければ、株価は上がらざるを得ないのである。
日本株は配当利回りが低く、株主優待でお茶を濁しているから、この現象が見えにくいのではないだろうか。
永久保有の意味
市場では配当が10万円になった時点で、株価は200万円ほどになっているはずである。
すると配当利回りは5%のままだ。
配当利回りがある一定のところに収まるように、株価は変動する。
しかし、もしあなたが株価100万円の時点で買っていたら、今や配当は10万円なのだから、あなたが保有する株の配当利回りは10%なのである。
これがもっと進んだ状態が、例えばウォーレン・バフェットのコカ・コーラ株だ。
彼が大昔に爆買いしたコカ・コーラ株は今や配当利回り数十%(30~40?)になっているらしい。
バフェットが、買った株を永久保有すると言う理由がこれである。
今や株価が下がろうが、(コカ・コーラの業績が極端に悪くならなければ)持っているだけで利回り数十%なのだから。
永久保有の誤解
たまに株ブログ等でバフェットが買った株だからという理由で(例えば)コカ・コーラ株を買って、永久保有すると宣言していたりするが、今さらもう遅い。
コカ・コーラの旬は終わっている。
積立型年金ファンドの投資先は国内株
前回の記事で、Superannuationという積立型年金ファンドの一例を紹介した。
1985年設立以来の年平均リターンは9.68%だ。
このファンドはバランス型で、オーストラリア株、オーストラリア不動産、海外株、債券などに投資しているが、やはりメインはオーストラリア株だ。
つまり、年平均9.68%という羨ましすぎるパフォーマンスを達成できたのは、オーストラリアの企業が増益し続けたからなのである。
「2000万円問題」の解決方法
今回の騒ぎは馬鹿げていると思うが、私は、金融庁が国民を投資に誘導したことについては不誠実だと思う。
おそらく彼らの意図は、
皆に株を買わせる
→株価が上がる
→株で儲けた一部の人が消費する
→経済活性化
だろうが、彼ら自身そんなシナリオが現実的だとは思っていないはずだ。
「計画的に貯蓄し、それを維持するために節約し続けろ」というのが本音だと思う。
しかしそれでは消費を減らすことになるから、他に提示できる案がない以上、無理やり投資を勧めるしかないのだ。
日本株はアベノミクスで上がったが、今後もそれが続くと見る人は少数派だろう。
生産年齢人口(消費の主役)が減少していく日本で、企業が利益を上げていくのは至難の業だ。
(上場企業には輸出企業が多いかもしれないが、それでも、売り上げの多くは日本国内に依存している。)
だから上で述べた「株価が上がる原理」に素直に従って、
移民政策で生産年齢人口を増やす
→企業の利益が増す
→皆が株を買わざるを得ない(買った方が得だから)
→株価は上がらざるを得ない
→多くの人が株で儲ける
の方がよほど現実的だ。
このように、誠実な人は移民政策を啓蒙するのである。