秒速で1億円借金する男
私はシドニーで
不動産投資関連のMeetup
に顔を出していた。
運営メンバーのPropertyへの心酔はカルト教団さながらだった。
彼らは根っからの、心の底からの不動産信奉者だったのだ。
秒速で2億円近く借金する男
運営メンバーの一人は、直近二年で2.5ミリオンのポートフォリオを構築したと、それがさも偉大な達成であることのように紹介されていた。
私は内心、突っ込まずにはいられなかった。
それって2ミリオン以上の負債を背負っただけでは?
彼らの戦略はこうだった。
- 頭金ができたら一軒目の物件を最大限のローン比率で購入する
- ローン元本は返済しない(インタレストオンリー)
- そのうち値上がりする(物件評価額ー購入価格=エクイティ)
- エクイティを利用してローンを借り二軒目を購入する
- そのうち値上がりする
- エクイティを利用して…
以下繰り返し。
であるから最初の物件選びが非常に重要、とのことだった。
バラ色すぎる青写真
私は尋ねた。
そうするとローンがどんどん膨れ上がることになるけど最終的にはどうするんですか?
彼らは大真面目に答える。
「その頃には一軒の価格は二軒分の購入価格に相当するようになっているから、一軒売って別の一軒分のローンを返済する。だから十軒持っていれば五軒売る。二十軒あれば十軒売ればいい」
「なるほど…」
彼らの青写真は上記の「3. そのうち値上がりする」を前提としていた。
そうだ。確かに過去において、特に直近十年において不動産市場は高騰した。
それを根拠に彼らは今後も不動産は値上がりし続けると信じて疑わなかったのである。
そのMeetupは実のところ参加者への物件販売が目的であったため、運営メンバーは当然ながらネガティブなことは言わない。
ただそれは抜きにしても、彼らは本気で、心の底から
不動産を信奉しているように見えた。
前にも述べたが2017年当時(今でさえ)、消費者物価指数や賃金上昇率をかけ離れて不動産価格だけが異様なまでに高騰していた。
これはGFC後の金融緩和(オーストラリアにおいてはこれでもかという政策金利の下げ)によって世界中の主要都市で起こった現象だ。
オーストラリアの不動産市場が後退を初めて二年近く経つ。
彼らは今、Meetupの参加者たちにどのような戦略を指南しているのだろうか。