オーストラリアでは猫も杓子も不動産投資 ②
私はシドニーの会社で働いていたが、転職を決めメルボルン郊外へ引っ越すことになった。
同僚のオージーに
引っ越し先は、シドニーに比べたら断然家賃が安い!
と喜び勇んで語ったものである。
彼は「だったら絶対家を買った方がいい。いや、買わなければならない」と親切心から私にアドバイスした。彼は心優しいオージーだった。
「まあいろいろ見て、良さそうなら買うかもしれない」私は煮え切らない返事をした。
シドニーっ子たちの明暗
彼は生粋のシドニーっ子だが、50代前半まで自宅を買わなかったことを心底後悔しているようだった。それ故のアドバイスである。
一方で、もう一人いたオージーは10~20年前に一軒家を買い、それが今や1.5ミリオン以上になっていた。残りのローンなど微々たるものだ。
何たる格差だろうか。
ある時点における、買うか買わないかの判断、時の運だけがこのような差を生んだ…。
実際メルボルンは「買い」だったか?
その後メルボルン郊外に引っ越し、私はシミュレーションしてみた。
その結果、やはりメルボルンにおいても不動産は過大評価されていると判断した。
そして今や市場は冷え始めている。
「絶対に買え」とは何とも無責任なアドバイスではないか。
ところで後者のオージーは日頃私に、「この仕事は疲れた。早くリタイアしたい」と漏らしていた。
私は「じゃあすぐに家を売り払って賃貸に移って、売却益は他の投資に回した方がいい。そして疲れない程度にパートタイムの仕事をすれば?」と答えたものだ。
現実的でないと彼は受け取ったようだが、私は実際、大真面目だったし、それが最善だと信じていた。