オーストラリアでは猫も杓子も不動産投資 ①
不動産は酒の肴
シドニーでは友人・知人との会話で、しょっちゅう不動産の話題になった。
会う人会う人、猫も杓子も投資物件を所有している――私が移住して来て衝撃を受けた最たるものがこれだった。
中国人の頭の中
私の周りには中国人が大勢いたが、会話がどうにも噛み合わないときがあった。
私は数少ない賃貸派だったが、彼らから見て私がそうしているのは、家を買う頭金がないからだと踏んでいる節があったのだ。
彼らにとって、また大方のオージーにとって
家なんてものは頭金ができ次第、秒速で買う
ものらしかった。
そういった思考は以下の図から醸成されたのだろう。
不動産は大抵ローンで買うから、自動的に数倍レバレッジをかけることになり、リターンは図の傾き以上になる。
過去においては確かに、不動産さえ買っておけば間違いなかったのである。
私の頭の中の消しゴム
一方で私はと言えば、これまた純粋に損得勘定に基づいて選択をしていた。
2015年に移住してきた私にとってシドニーの不動産価格はすでに高くなりすぎていた。
消費者物価指数や賃金上昇率から大きく乖離して、不動産価格だけが異常なまでの高騰を見せていた。
購入して賃貸に出した際の利回りも、銀行預金以下もしくはマイナスになる場合さえあった。
これ以上、不動産価格が上がることなど、理屈上ありえない。
そんな市場は早晩是正される…。これが私の胸の内だった。
しかしながらマーケットはそれでも上昇し続けていた。
上がるから買う、買うから上がる。
つまり、その時点までは投機が投機を呼んでいたのだ。
実際、私の周りにも、この市場においてなお買い手にまわる人たちがいた。
さて、その後どうなったか。
2017年にピークをつけてから、1年半の下落である。
2019年だけで25%下落するという予想もある。
さらには、半値まで行くという極端なことを言う輩まで現れた。
人はトレンドの延長線上でしか物を語れないようである。